大名歯科院長ブログOHMYO BLOG

磨いてもムダ!? ― 歯医者が抱える“ハブラシ指導”の矛盾

2025年5月26日 大名歯科院長
この記事をFacebookでシェアする

歯科医院でよく聞くアドバイス――

「歯ブラシでは落としきれない汚れがあります」

でもその一方で、患者さんには

「もっと丁寧にブラッシングしてくださいね」

「磨き残しがありますね、ここを頑張って」

……え? それって矛盾してませんか?

たとえばこんな場面を想像してみてください。

患者Aさん(30代・女性)

歯科衛生士にこう言われました。

「歯と歯の間にバイオフィルム(細菌の膜)ができてるので、歯ブラシだけでは完全には落ちません」

なのに次の瞬間、

「もっとしっかり磨いてください。ここが全然磨けてませんよ!」

Aさんは戸惑いました。

「えっ、落ちないって言ったのに…頑張っても意味ないってこと?」

このような「歯科ジレンマ」は、現場でもよくある話です。

歯ブラシで落としきれないのなら、なぜそれを“頑張らせる”のか?

実はここに、**専門家側の“伝え方の課題”**と、**患者側の“受け取り方のギャップ”**が潜んでいるのです。

もちろん、歯ブラシが意味ないわけではありません。

歯ブラシは第一の防御線。

でも、届かない場所やこびりついた細菌には、フロスや歯間ブラシ、定期的なプロのクリーニングが必要なのです。

じゃあ、どうすればいいの?

患者さんにはこう伝えるのがベストです:

「歯ブラシはあくまで“ベース”。でも、すべての細菌を落とすには限界があります。だからこそ、定期的なケアや補助器具を一緒に使って、チームで口の中を守っていきましょう。」

このように伝えれば、「頑張ってもムダ」と感じることなく、前向きにセルフケアを続けられるはずです。

「歯ブラシだけじゃ落ちません」と言いながら「もっと磨いて!」は、ちょっと矛盾して聞こえる。

でもその理由と対策を正しく知れば、患者さんのモチベーションもぐっと変わります。

“伝え方ひとつ”で、セルフケアの未来が変わるのです。


この記事をFacebookでシェアする

Copyright(C) 2013 OHMYO Dental Office All Rights Reserved.