ホワイトニングで歯が“削れる”?数字で冷静に検証してみた

ホワイトニングは歯が弱るってホント?
2009年4月16日付の 日経産業新聞 に、米オハイオ州立大学の研究チームが「家庭用の歯の漂白剤が歯の強度を弱める可能性」を示したという記事がありました。「漂白剤メーカーには改良の余地がある」という指摘つき。これを読むと「え、ホワイトニングって危ないの?」と不安になりますよね。実は当院でも自宅でできるホームホワイトニングを導入しています。だからこそ、数字で落ち着いて中身を見てみましょう。
記事のキモは“ナノメートル(nm)”
報告では「漂白後、歯が1.2〜2ナノメートル減る」——とあります。
ホームホワイトニングは通常1回1週間(7日間)。仮に最大の2nm/日で計算すると…
1週間で 2nm × 7日 = 14nm 1年間(毎日)で 2nm × 365日 ≒ 730nm(ざっくり700nmでも同じ桁感) 20〜60歳の40年間(毎日)で 2nm × 365日 × 40年 ≒ 29,200nm(約0.029mm)
では、歯の外側を守るエナメル質の厚みは?
一般的に約2mm = 2,000,000nmとされます。
40年間“毎日”続けたとしても、29,200 / 2,000,000 ≒ 1.46%。
感覚でいえば70分の1弱が減る程度の計算です。
サイズ感の例え
人の髪の毛の太さは約70,000〜100,000nm。
仮に40年間毎日ホワイトニングして29,200nm減ったとしても、髪の毛の半分以下の厚みです。数字で見ると、想像よりずっと小さい変化だと分かります。
ここが誤解ポイント
“歯が削れる”という言葉だけを見ると、不安が一気にふくらみます。でも実際は「どのくらい減るのか」という量の問題。そして、使用頻度・期間・濃度・術式によって影響は変わります。
記事のような研究は「極端な条件でも安全か」を見るため、あえて最大値寄りの設定で検証されることも多い。数字を鵜呑みにせず、桁感と前提を確認することが大切です。
結論(安心材料と上手な向き合い方)
日常的な使い方+歯科の診断・指導のもとなら、エナメル質に致命的なダメージが生じる可能性は極めて低いと考えられます。 不安なら、毎日連続ではなくインターバルを置く、濃度や時間を守る、フッ化物配合ペーストや再石灰化ケアを併用する、といったリスク管理で十分に対応できます。 そもそもホワイトニングは治療ではなく美容。だからこそプロの診査(知覚過敏・亀裂・露出象牙質の有無など)を受け、自分に合う強さと頻度を選ぶのが賢い選択です。
一言でいうと
「ホワイトニング=歯が弱る」は短絡的。
“どれくらい・どんな条件で”を数字で見れば、怖がるより上手に使うが正解。
こんな人は歯科で相談を
しみる・ズキッとするなど知覚過敏が出やすい ヒビや欠けがある、歯ぎしり・食いしばりが強い 妊娠・授乳中や重度の歯周病治療中(適応判断が必要)
「ホワイトニングで“歯が1.2〜2nm減る”って聞いて不安に。40年毎日やっても約0.029mm=エナメル質の1.46%程度。数字で見ると怖くない。大事なのは頻度と使い方、そして歯科のチェック。正しく使えば“白さ”と“強さ”は両立できます。」
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- 大名 幸一 Koichi Omyo
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